床・壁・天井が無垢材の住宅

2003年竣工の南区の住宅は自然の木をふんだんに使った内装の住宅でした。

今現在になってこの木の内装がとても良いものに思えてアップです。

建て主の要望で無垢の床材を壁と床、天井まで木パネル貼りにした内装の住宅です。

天井まで無垢材を貼ったことでログハウスのようなインテリアになりました。

建築地は市街地でしたが内装は別荘のようでした。

外観はモダンの要素も取り入れて、木パネルとジョリパッド等で構成しています。

当時としては墨色やグレーの外観は珍しかったため人目を引くものでした。

15年以上たった現在、この住宅の良さを感じてきたのが、木貼りの内装です。

子供の成長のために蛍光灯で明るくするのが当時の主流のインテリアでした。

私の設計でも床は無垢材を使用しても壁は漆喰や珪藻土やクロス貼りにする設計が多かったのです。

 

完成当初は照明を通常の倍つけたのに暗く感じたことで、木のインテリアの暗さをデメリットに感じたこともありました。

大量につけた照明は木パネルに吸われてしまい若干暗めのインテリアの印象でした。

 

現在ではむしろリビングのインテリアは暗くても良い。と思うこともあります。

ほの暗さはメリットだと確信しているからです。

 

 

谷崎潤一郎の随筆、「陰翳礼讃」(いんえいらいさん)にあるように、

日本の住宅は、昔はほの暗い内部空間であったため、

日本にあるものは、少し暗い場所のほうが美しく見えるものや感じるものが多いということです。

 

例えばみそ汁を入れる、漆塗りのお椀なども少し暗い場所で見たほうが美しいと言うのです。

味噌汁なども暗い茶席で食べたほうがおいしく感じたと書いてあります。

 

日本人の肌の色もほの暗いほうが魅力を感じるとあります。

竣工の2003年当時は今と違って、LEDではなく蛍光灯や白熱灯が主流でした。

谷崎潤一郎は白熱灯ではなく、ろうそくや行灯(あんどん)などの光が良いと書いてありましたが、

さすがに、谷崎潤一郎の時代ではなく、行灯で暮らしましょうとは言えない時代です。

 

建て主の多くは部屋の中は明るくしたいと考え、要望もより明るくと言われることが多いです。

ヒサシの深かった昔の日本の住宅の昼間でもほの暗いインテリアとは違う趣味です。

 

現時点ではLED電球の光を調光して絞れるようにすることで、より明るくではなく、

より暗くできるようにするのが正ではないかなと感じています。

部屋の明かりを真っ暗ではなく、いくつか少なくして

例えばリビングとダイニングの証明を消して、キッチンの照明だけにして見れば

くっきりとした陰影が様々なものに現れて、影が美しいと感じるはずです。

手摺やドアに至るまで、無垢材にこだわったインテリアは

ほの暗さだけでなくやわらかで親近感のわくやさしさも同時に作り出してくれました。

柱はヒノキを使用していたので露出することで香りも感じられました。

棚などに至るまで無垢材を使用しました。

無垢材はひねりなどの経年変化があるので集成材の使用のほうがベストとは思います。

梁を露出して、手摺も木材としたことで、木の桟からもれる光も感じられました。

AI化が進んですべてがオートで均質になっていく未来には自然素材は得られないかも知れませんが、

現時点では入手可能な木材のよさというものを感じています。